秀808の平凡日誌

第9話 余興

第9話 余興


 古都ブルンネンシュティグ

 そこにある病院で、ロレッタは目を覚ました。

 窓から入ってくる日差しがまぶしい。

 ロレッタが虚ろな目をゴシゴシとこすっていると、起きたのに気づいたアシャーが声をかけてきた。

「大丈夫ですか?3日も眠っていましたよ」

「・・・ここは?」

「古都ブルンネンシュティグの病院ですよ。あの後、私はあなたを担いで古都に向かってたんですが・・・多少無理をしたせいか、私も倒れてしまいまして・・・そこを通った古都の国立自衛団の人が本部に連絡して助けてもらい、今にいたります。」

 そうか、と自分は生きているんだと自覚したあと、降って沸いたようにある事を思い出した。

「そ、そうだ!ヴァンとラムサスは!?」

「それが、ラムサスさんは『帰還の巻物』で戻ってきたのですが、ヴァンさんの方は行方知れずで・・・」

 そんな とロレッタの顔に不安の色が浮かぶのを、アシャーは見た。

 自分は詳しくは見ていなかったが、ヴァンはファントムの『メテオシャワー』をロレッタの代わりに受けている。

 無事でいるわけがない。

 だが、その可能性は頭の中から強引に振り払った。

 自分達が信じなければ、誰も彼の生還など考えないと思ったからだ。

 ふと、不意に部屋の入り口から声がかけられる。

「あ、目を覚ましたんだ。大丈夫?」

 ロレッタが声の方を見ると、そこには

 『ファミリア』と呼ばれるモンスターを2体連れたビーストテイマーと、1人のシーフが駆け寄ってくるのが見えた。

 誰だろう? と視線を向けているロレッタに、アシャーが言った。

「この2人が、倒れた私を見つけて、本部に連絡してくれた方達です。こちらがビーストテイマーのレイムさん。シーフの方がレヴァルさんです。」

「あ、ありがとうございました・・・」

 ロレッタがそっけなく握手を求めると、レイムがすぐにその手を握りしめる。

「よろしくっ!・・・ほら、レヴァルも挨拶しなきゃ」

「ん・・・あ、あぁ・・・よろしく」

 レヴァルも黙って手を握り返す。

「・・・まぁ、ヴァンさんなら大丈夫ですよ。あの人なら、きっと帰ってきますって」

 アシャーが笑いながらロレッタに声をかける。

「・・・そうね・・・」

 ロレッタは、ヴァンの無事を心から強く祈った。



 古都王立自衛団の戦術指令室に、「レッドアイ研究所からモンスターが大量に徒党を組み、古都に向かっている」という情報が流れ込んできた。

 その情報のせいで、多少の混乱をきたしていた。

 ギルドマスター達のあわただしい怒鳴り声が響く。

「こちらも対抗戦力を集めろ!時間は無いのか!?」

「到着時刻はいつ頃だ!?」

「まずは市民に伝えてから、避難場所に移動させろ!まずはそれからだ!」

 ロレッタ達に、安息の時は訪れようとしなかった。


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